生きることは、だから美しい

「見たことのない明日へ」

拝啓、記憶の中のキミへ。

2018年11月9日

 

ハタチの誕生日おめでとう。

 

大切なことはいつも必ずその日のうちにができない私なので、やっぱりお誕生日過ぎちゃった。どうか気持ちだけ伝わりますように。

これがあなたに贈る、最後の手紙です。「また手紙を書いてもいいかな?」と残したまま、1年ちょっとが経ちました。直接伝えることができなかった言葉が本当は山のようにあって。「私、幸せだったよ」なんて一言で終わらせてしまったけど、本当はもっともっと言いたいことがたくさんあって。ごめんね。弱さのせいで手紙を贈ることを諦めてしまった、私からの最後の手紙です。

 

 

 

お元気ですか。

 

おそらくあなたの記憶の中に私は存在していません。場面を切り取ったその一瞬に、私が映っているかいないか、そんな程度です。ですが、あなたが私のことを知らないように、私もあなたのことをさほど知りません。なぜなら応援しようと決めて間もないうちに、あなたはいなくなってしまったから。

 

大好きな人がいなくなってしまう辛さを、あなたは知っているでしょうか。

 

亡くなった訳では無いのに、生きているのに、絶対に会えない。もう二度と顔を見ることができなければ声も聞くことができない。踊ってる姿、歌ってる姿、演技してる姿・・・それは全て記憶と僅かに残った映像の中だけでしか再生することができなくなってしまう。そんな日が、突然訪れました。

 

もちろんアイドルであった以前にひとりの人間としての人生があります。やりたいこと、挑戦してみたいこと、叶えたい夢。それがうまくイメージできない何かだったとしても、誰かがそれを止める権利なんてありません。だけど、もう少しだけでいいから、アイドルでいてほしかったなあって言うのがファンの本音です。

 

なんでだろう、あなただけはずっといるような気がしていたんです。当時の担当を見に行っていた2017年5月3日。Jr祭りin大阪城ホール。アリーナ外周横にいた私は、ちょうど1曲目を歌い終えて外周を歩いていたあなたの姿に思わず手を振りました。あなたは、ほかの色のペンライトを持っていた私に優しく笑いかけ、手を振り返してくれたんです。ああ、この子はずっとアイドルなんだろうな。そう思った瞬間でした。でも違った。それが私のエゴであることに気づけたときには、あまりにも手遅れでした。最後の勇姿を、しっかりとこの目に焼き付けることができたことは不幸中の幸いだったのかなあって、たまに思うんです。まあ泣いててほとんど覚えてないんですけどね。

 

いつか、幻になってしまうのではないかって、そんな寂しい気持ちも抱えています。あれもこれも、全てなかったことになってしまうような。どんどん記憶から薄れていって、たまにしか思い出さなくなって、いつか「そんな人もいたな」って。なかったことにしたくない。いなかったことにしたくない。こんなに苦しい気持ちになるのなら、いっそ出会わなければよかったって何度も思いました。でも、「明日死んでもいい、キミを知らずに100年生きるくらいなら」。出会えたことだけは、やっぱり否定したくなかった。だって、幸せだったから。

 

 

あなたの担当をしたわずか1ヶ月半で、私はたくさんの経験をしました。嬉しいこと。この人を好きになってよかったなあって改めて思うこと。ジャニーズのファンとしてはあまり自分の身に起こってほしくないこと。それのどこを切り取ってもやっぱりこの経験は私にとって必要なことだったのかなあって。当時わずか18歳だった少年に、今でもこんなにもの思いを抱えているなんてはたから見たら笑われそうだなあって考えることもあるけれど私はいたって真面目で。でも、あなたの話をするのはこれを最後にしようと思います。帝国劇場のカーテンコールの立ち位置に魂置いてきちゃったから全然成仏できなくて、思い出してはメソメソ引きずってるけど、前に進まなくてはいけないから。

 

 

そして、

 

 

あなたのおかげで、現在素敵な子の担当をすることができています。あなたがまだそこにいたら、絶対に担当にはなっていなかった子。あの夏、「くそかっけーんだ!」って嬉しそうにあなたが褒めていた、そんな彼の担当です。彼に出会わせてくれてありがとう。今は、感謝の気持ちでいっぱいです。

 

 

 

私に出会ってくれて、どうもありがとう。

さよなら、大好きでした。

 

 

 

敬具

 

あなたのファンより

 

 

朝日が昇る前の欠けた月を
君もどこかで見ているかな
何故か訳もないのに胸が痛くて
滲む顔 霞む色

今更悲しいと叫ぶには
あまりに全てが遅すぎたかな
もう一度初めから歩けるなら
すれ違うように君に会いたい

 

灰色と青(+菅田将暉)/ 米津玄師